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下丸子動物病院からの小説 ミステリー作家 揚羽猛(あげは たけし)
「マリー、貴女は猫、じゃなくて猫ショウ様」
登場人?物
マリー様
この物語のヒロインで、女子高生の姿をしているがその正体は猫ショウ。
トラ
この物語の語り手。彼の一人称でストーリーは進む。
あらすじ
猫のトラは猫ショウのマリーに憧れていて、いつしか自分も猫ショウになりたいと考えるようになる。そんな彼の日常の物語。
■第五話 変身
マリー様は特撮物が大好きだ。
今日もレンタルショップでその手のDVDを借りてきて御鑑賞。
そっとドアの隙間から覗いてみると、テレビ画面に巨大な猿がロープウェイを襲っているところが…
これは昭和の特撮「ウルトラQ」の一場面で、「五郎とゴロー」という話。
ストーリーはアオバクルミとかいう甲状腺に異常を引き起こす木の実を食べた猿が巨大化し、人間に迷惑をかける話。
(本当は猿と人間の友情の話なのだが…)
マリー様ときたらストーリーなどそっちのけ。巨大猿が暴れまくっている場面だけケラケラ笑いながら見いっている。
この人、否この猫、人が困っている姿に快感を覚えるらしい。酷い御方だ。
ところで俺たち猫の世界でも最近甲状腺について話題になっている。
それは…
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俺の家の真向かいにサブという名のアメリカンショートヘアーが飼われているんだが…
そいつ最近になってガリガリに痩せてきてさ。
飼い主がケチで飯を食わせてくれないのかとも思ったんだ。
なにしろ半年前は丸々と太っていたからな。
ところがそうじゃないんだ。
飼い主は今で以上にサブに食事を出していたんだ。
サブの奴それをパクパク、否ガツガツ食べてさ、
それでも足りぬと飼い主のテーブルに飛び乗り夕食のおかずの唐揚げをペロリ。
「サブ?」
さすがの飼い主もこれにはキレてサブを叩こうとしたんだが、
サブの奴目を爛々と輝かせて、ガリガリの体で、
「ニヤーッ?」
凄んだそうだ。
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果たしてサブの身の上に何が起きたのか?
ポイントは次の通り。
1 サブはガリガリに痩せていた。
2 サブはきちんと食事をもらっていた。サブの大好物の猫缶を。
3 サブはいつもお腹を空かしていた。普段食べないものにも食指を動かした。
さて答えは?
1 サブの体に悪霊が取り付いた。
2 ボケが始まった。それで食事をしたことも忘れてしまった。
3 何か病気を患っている。
正解は?
3番である。
ではその病名は?
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サブの病名は「甲状腺機能亢進症」。
人間のバセドウ氏病と同じ原因だ。
人間の場合目が飛び出して、喉が腫れて、心臓がバクバクいう病気なのだが、
猫では体がガリガリに痩せてきて、食っても食っても食い足りない病気なのだ。
甲状腺ホルモンとはエネルギーを消費させようとする作用があるから、これが体のなかに増えるとエネルギーをどんどん使い
、食っても食っても追いつかない。
ゴローのように巨大化しても困るが、サブのように多食症になっても困る。
ちなみに「猫の甲状腺機能亢進症」は食事療法でヨードをコントロールするのが第一だそうだ。
続く
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